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博士後期課程進学のススメ

本学の理学専攻情報科学領域では博士後期課程に進学する人を熱烈に歓迎いたします。
ほんの1%でも興味のある方はぜひ本ページをご一読いただいてご検討いただければと思います。

博士後期課程に進学する意義

博士後期課程への入学は研究を続けるための第一歩であるだけでなく、皆さんの人生を大きく広げる分岐点でもあります。博士後期課程への進学によって、以下に示すような素晴らしい未来が皆さんを待っています。

  • 研究を続ける意義
  • まだ解明されていない学問の課題を解くための一員となり、世界の誰も解明していない新しい知見を見出す一員となります。研究という工程が少しでも好きな人にはこれ以上ない至福の時間が待っています。そして生涯にわたって有用となる高度な問題発見能力や問題解決能力を身に着ける機会にもなります。

  • 世界に羽ばたく
  • 世界的な学会で発表することで、学問社会の世界の一員になれます。世界中の研究者に論文を読まれるようになり、世界中に優秀な仲間を作ることが可能になります。

  • 世界に貢献する
  • 新しい研究成果を打ち出すことで、学問の新しい流れを作る一員になれます。また、社会を大きく変える新しい技術や、社会問題解決に貢献する貴重な技術を開発することが可能になります。

  • 専門性の高い人生を切り拓く
  • 大学教員などのアカデミックな職業だけでなく、企業の研究員なども含めて、職業として研究者になるためには博士号はほぼ必須な状況となっています。また企業でも研究職以外の多くの専門的な職種において、博士号を取得した多くの人が活躍しています。さらにいうと、世界の主要国の一流の企業人には、研究職以外の職種の人にも博士取得者が非常に多くいます。このような世界の一流の企業人と対等に見られるためにも、博士号取得が有効に働くことがあります。

  • 修士まででは研究は終わらない
  • 博士前期課程に進学した皆さんは、学部卒業研究から通すと一定年数の研究を経験したことになります。しかし研究とは多くの勉強と経験を要する工程であり、修士までの研究でそれが完成するとは言い難いものがあります。ましてや入学するやいなや就職活動に大きな時間を費やしている修士学生にとって、博士前期課程で研究に没頭できる時間はとても十分なものとは言えません。修士までの研究で皆さんは本当に「やりきった」と言えますでしょうか。本格的に「研究とは何か」「学問とは何か」を考えてみて、修士までの研究を「博士後期課程で活躍するための助走」と考えてみませんか?

博士後期課程進学後のキャリア

本学情報科学領域の博士後期課程進学後のキャリアは非常に多彩で、むしろ学術機関からも企業からも引っ張りだこな状態が続いています。博士後期課程に進学したら却って就職が悪くなるのでは…といった話を聞くことがあるかもしれませんが、本学情報科学領域では全くその心配はありません。以下に代表的な進路を紹介します。

  • 大学・研究所
  • 研究者として大学や研究所などの学術機関に就職するには博士号の取得は必須です。進学を迷う必要はありません。

    そして博士号取得後には、多くの大学教員は複数の組織を経て研究教育経験を積みます。例えば本領域の五十嵐悠紀先生は、博士号取得後に筑波大学の特別研究員、明治大学の教職を経て本学に赴任しています。また桑名杏奈先生は、博士号取得後に本学の助教/講師を務めたのち、群馬大学・和洋女子大学の教職を経て本学に赴任しています。

    その他の例として、博士号取得後すぐに他の大学に助教などの形で就職した人や、企業研究職を経て大学に転職した例もあります。また研究機関への就職として、国立情報学研究所や産業技術総合研究所などへの就職の例があります。

  • 企業研究所
  • 情報産業の多くの企業において研究開発職から他の職種に移ることはあっても、他の職種から研究開発職に移ることは容易ではありません。そこで新卒就職では研究開発職を目指すという人も一定数います。一方で企業の研究所でも、最近では博士号を取得してから就職する事例が増えています。本学では例として、NTT/NTTドコモ/日本アイ・ビー・エム/LINEヤフーなどの研究所への就職の事例があります。
    なお、博士前期までで就職して社会人学生で博士号を取得し、その後に研究所に異動する事例もありえなくはないですが、新卒で研究所に就職するよりもさらに難易度が高いかもしれませんのでご注意ください。

  • そのほかの職種
  • 博士後期課程に進学したからと言って研究者にならないといけないわけではありません。博士号取得後に企業にて研究以外の部門に就職する人や、ベンチャーなどを起業する人、公務員になる人などもいます。

博士号取得者のデータ

以下は本学の情報科学領域にて博士号を取得した先輩方のデータです。ぜひ参考にしてください。
※2024年度末現在のデータです。

  • フルタイム学生:社会人学生等の比率
  • フルタイム学生が58%, 社会人学生等が42%です。

  • 特別研究員(DC1/DC2)またはそれに準じる支援を受けた学生
  • 2024年度までに博士号を取得したフルタイム学生のうち約30%が対象となっています。現在は後述するSPRING/BOOSTをはじめとする支援が増えているため、この比率は上昇することが期待されます。

  • 研究留学を体験した学生
  • フルタイム学生のうち約30%が研究留学を体験しています。
    留学先の例:ドイツ人工知能研究センター、ザールラント大学、ストラスクライド大学、シドニー大学、モナッシュ大学、シュトットガルト大学、パリ=サクレ大学、トロント大学

  • 研究インターンシップを体験した学生
  • フルタイム学生のうち約25%が研究インターンシップを体験しています。
    インターンシップ先の例:産業技術総合研究所、海洋研究開発機構、ドイツ人工知能研究センター、NEC、LINEヤフー

  • 博士号取得後の新卒就職先
  • 大学・研究機関・企業など、幅広い就職先で活躍しています。
    新卒就職先の例:お茶の水女子大学、東京科学大学、東京大学、中央大学、成蹊大学、中国石油大、産業技術総合研究所、原子力研究開発機構、海洋研究開発機構、情報通信研究機構、国立情報学研究所、NTT(研究所)、NTTドコモ(研究所)、日立製作所(研究所)、LINEヤフー(研究所)、都立高校

高度情報専門人材の確保に向けた機能強化への採択

お茶の水女子大学は2025年、大学・高専機能強化支援事業(高度情報専門人材の確保に向けた機能強化に係る支援)に採択されました。これにともない、情報科学領域の定員が拡大されると同時に、情報科学領域の研究教育環境が以下のように拡充される予定です。

  • 高速計算機などの新規購入により、計算環境の一層の充実を試みています。
  • 研究者の公募を予定しており、充実したスタッフとの議論のもとで研究を進められます。
  • 博士後期課程学生を対象とした事業として本学は、以下のプログラムに採択されています。これらは学生への金銭的支援を含むものであり、情報科学領域の学生の応募が強く期待されています。

このように本学情報科学領域の博士後期課程の環境はますます充実したものになろうとしています。教員一同、皆さんの入学を心待ちにしています。

女子学生のためのお茶大

お茶大は以下のような点で女子学生にやさしい環境が揃っています。進学先として選ぶ際の参考にしてください。

  • お茶大は卒業生もみな女性ですので、ロールモデルとなる女性の先輩が多数います。博士号取得後の進路を相談できる同性の先輩を簡単に見つけることができます。また、同じ立場の女性が周囲にたくさんいて悩みを共有できる、という意味でも安心して研究に打ち込める優れた環境と言えます。
  • お茶大はライフワークバランスを保ちながら研究に打ち込める施設や制度に恵まれています。在学中の結婚や出産などのライフイベントがあった際には、長期履修制度を選択することもできますし、大学院生がキャンパス内の保育所(いずみナーサリー)を利用することも可能です。また旧姓利用のガイドラインをはじめ、結婚後のことを考慮した仕組みが進んでいます。また学内全体をみても、ライフワークバランスを重視した研究生活に対する習慣やカルチャーがしっかりできています。

過去の事例として、修士で別の大学に進学したものの、お茶大の環境を見直して博士進学で戻ってきた、という人もいます。ぜひ参考に頂ければと思います。

さまざまな形での入学

本学の情報科学領域には、博士前期課程からストレートで内部進学するだけでなく、さまざまな形での入学者がいます。以下にその典型例を紹介します。

  • 博士前期課程で就職し、さらに同時に社会人学生として入学
  • 前述した本学の内部進学制度(受験料と入学料が無料)は社会人学生として入学する学生にも適用されます。つまり、博士前期課程で就職し、さらに同時に社会人学生として入学しても、受験料と入学料は無料になります。本学ではこの仕組みを利用して社会人学生として内部進学する学生も多数います。その多くの学生は入学と同時に休学し、仕事に慣れたら復学します。

  • 博士前期課程で就職し、数年後に学生として入学
  • 就職して数年してから、研究への熱意を思い出した人や、業務上の理由で博士号が欲しくなった人、あるいはキャリアチェンジのために研究に再着手したくなった人もいます。さらには、「就職後〇年経過したら会社の経費で社会人学生になれる」という企業に勤務する人もいます。本学ではそのような学生も歓迎します。

  • 他大学の博士前期課程からの本学への進学
  • 他大学で研究経験を積んだ後に本学で博士後期課程に入学する人もいます。本学の博士後期課程の入試は口述試験のみですので筆記試験の対策が不要です。他大学からの入学も熱烈歓迎します。

入試から博士号まで

  • 入試
  • 本学情報科学領域の博士後期課程の入試には筆記試験がなく、口述試験のみの入試となっています。15分程度で修士論文の内容と入学後の計画を発表していただき、20分程度の試問を受ける形となっています。指導教員希望者の方との十分な事前打ち合わせができていれば、入試についてはあまり心配する必要はありません。
    なお、博士前期課程の在籍中の学生が受験した際には受験料と入学料が無料になります。しかも、この無料の特典は社会人学生として進学する学生にも適用されます。

  • 入学後の生活
  • 入学後は研究室に所属して、指導教員や研究室メンバーとの議論を深めながら研究を進めます。また、研究の他に10単位を取得する必要があり、数科目の授業を履修することになります。
    入学後の研究体制はさまざまです。日本学術振興会特別研究員 (DC1/DC2) に採択される学生、それ以外の研究事業に採択される学生、研究留学によって国際的なプロジェクトを進める学生、国内国外のトップ企業研究所でのインターンシップによって成果をあげる学生など、さまざまな形での活躍があります。
    一方で本学には「長期履修制度」という独自の制度があります。出産をはじめとする女性のライフイベントとのバランスをとった形で博士号取得を目指すために、4年以上の在学を前提として履修を進めることも可能になっています。

  • 社会人学生の場合
  • 教員一同としては可能な限りフルタイム学生としての進学を推奨していますが、一方で社会人学生としての入学も歓迎しています。忙しい仕事の合間で効率よく研究を進められるように、指導教員等と協議してそれぞれの体制で研究を進めます。
    一方で、企業等に勤務しながらの研究はとても大変なものです。本学では社会人学生が仕事と研究のバランスを取るために、仕事の状況に応じて休学と復学を繰り返すといった柔軟な研究生活にも応じています。また仕事と研究の両立のために前述の「長期履修制度」を利用する社会人学生もいます。

  • 博士論文の審査
  • 博士論文の審査を受けるだけの十分な研究成果と業績をあげたら、博士論文を提出して審査を受けます。審査は原則として5人の審査委員により、1回の書面審査と2回の口述審査を受けます。その結果として公開審査会の開催が可能であると判断したら、公開審査会を開いて最終審査を受けます。本学情報科学領域の博士論文審査では、たとえ輝かしい学会業績をあげている学生であったとしても、博士論文の内容は厳しく審査され、その過程で多くの修正を要求されます。このような審査を経て、博士論文を完成させ、博士号が授与されます。

先輩学生の声

博士後期課程に進学した先輩学生にいくつかのアンケートをとってみました。もし皆さんがこの回答結果に共感できる点がありましたら、皆さんもきっと博士後期課程で充実した日々を送れることと思います。自信をもって進学をご検討いただければと思います。

  • 博士後期課程に進学を志した動機や理由
  • 9 もっと研究したい
    7 研究職に就いた(または就きたい)
    5 博士号が必要(あるいは欲しい)
    3 企業勤務者でも学問経験や専門性がほしい

    その他:学振や進学支援に採択された/アカデミアに残りたい/新卒就職先に満足しなかった/内部進学なら入学金免除だから/お茶大が好きだから/周囲と差をつけたかった/海外在住時に有利だから

  • 進学して得られたやりがい・成長・スキル・恩恵
  • 6 各種能力(思考力、英語、コミュニケーション
    5 人脈(研究者とのつながり、他)
    4 自己管理能力・持久力
    3 海外での研究員やインターンシップの機会
    2 研究職や教育職へのキャリアの可能性
    2 自分の意思でテーマを決めるやりがい
    2 論文の査読を通す経験
    2 自分の名前で成果を発表する経験
    2 アカデミックな視点・客観的な思考

    その他:大学関係の仕事/研究への自信/社会的な地位

  • 進学・修了しなければ得られなかった点
  • 7 企業職務での博士号にふさわしい配属
    4 アカデミックな職の可能性
    3 各種の能力
    2 大学に在籍することによる広い人脈
    2 進路の幅広さ

    その他:海外の研究機関に就職する可能性/周囲の信頼度

最後に

お茶の水女子大学の情報科学領域の博士後期課程では、このような手厚い体制で皆さんの入学を強く歓迎しています。少しでも気になる点がありましたら、お気軽に教員や先輩の方々に声をかけて質問してみてください。

なお、博士後期課程進学にはいくつかの有益な文献があります。興味のある方はこちらも読んでみてください。

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