当研究室で主催している公開セミナーのお知らせです.どなたでもご自由にご参加ください.セミナー後にはしばしば懇親会が開かれます.

第14回非線形セミナ@お茶大


日時:2016年1月29日(金) 15:00 〜 16:30
場所:お茶の水女子大学 お茶大アカデミック・プロダクション研究棟 201
アクセス: http://www.ocha.ac.jp/access/
(37番の建物です)

Speaker:
田村光太郎
東京工業大学大学院総合理工学研究科 知能システム科学専攻高安研究室

Title:
複雑ネットワーク上のメインストリームの抽出

Abstract:
社会現象をもとにした複雑ネットワーク上のノード間には、2体のノードの持つ スカラー量の積で相互作用の強度が決まる重力型相互作用が多く観測さ れる。 たとえば、国家間の貿易量[1]や移民[2]、都市間の交通[3]をネットワークとし て記述したとき、リンクを通じた資金や人の流れとして 解釈できる。このと き、2国間のGDPや人口のべき乗の積で、その流量が推定できることが知られてい る。我々は、日本企業100万社の取引データ 解析により、企業間取引ネットワー ク上の資金の流れにも同様の重力型相互作用が働いていることを確認した[4]。 この重力型相互作用で流量が決ま る流れには、リンク間に強い格差を生じさせ ることが分かり、流れのシステム全体に大きく寄与する流れは、ごく一部である ことが分かった。この支配 的な流れに注目することで、一般的な複雑ネット ワーク上の流れにおけるメインストリームを抽出する方法を提案し、流域範囲や 流域面積を定義した。 本研究では、抽出された構造を定量的に評価し、元の ネットワークに埋め込まれた構造としてその関係を解析した[5]。

[1]. R. Feenstra, ”Advanced International Trade: Theory and Evidence”, Princeton Univ. Press, (2003).
[2]. D. Card, Journal of Labor Economics 19, 22-64, (2001).
[3]. F. Simini, M. C. Gonz´alez, A. Maritan, and A.-L.Barab´asi, Nature 484, 96-100, (2012).
[4]. K. Tamura, W. Miura, H. Takayasu, S. Kitajima, H.Goto, and M. Takayasu, Int. J. Mod. Phys. Conf. Ser. 16, 93-104, (2012).
[5]. K. Tamura, H. Takayasu, M. Takayasu, Phys. Rev. E., Phys.Rev.E,91.042815 (2015)

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第13回非線形セミナ@お茶大


日時:2015年10月6日(火) 15:15 〜 16:45
場所:お茶の水女子大学 理学部3号館 6階 602号室
アクセス: http://www.ocha.ac.jp/access/

Speaker: Christian Bick (University of Exeter, UK)

Title: Phase Oscillators with Generalized Coupling: Collective
Dynamics and their Control

Abstract:
The dynamics of networks of phase oscillators may exhibit spatially
localized features: chimera states are solutions with localized
synchrony and incoherence. These dynamical localized structures have
been associated with bump states in neural field models. In contrast
to the classical Kuramoto equations, where the interaction between
oscillators is determined by the sine of the phase differences, we
study the effect of more general coupling on the network dynamics.
First, we outline some recent mathematical results on the existence of
weak chimera states in small networks of phase oscillators with
generalized coupling. Then we discuss how generalized coupling is
useful for applications. For example, mean field dependent coupling
can be used to control the spatial position of chimera states.

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第12回非線形セミナ@お茶大


日時:2015年6月8日(月) 15:30~18:00
場所:お茶の水女子大学 理学部3号館 2階 会議室(207)
アクセス: http://www.ocha.ac.jp/access/

[
プログラム]
(1) 15:30 - 16:20
「微小管とキネシンがみせる集団運動」谷田桜子 (東大理)
(2) 16:30 - 18:00
「細胞移動における濃度勾配検出と整流作用」澤井 哲 (東大総合文化)
(時間は目安です)

[
詳細]

(1)
微小管とキネシンがみせる集団運動
谷田桜子、古田健也^A、西川香里、小嶋寛明^A、佐野雅己
東大理、未来ICT^A

自然界で目を見張る光景のひとつに数万匹のイワシの群れや数百万頭のヌーの大移動があるが、このような「集団運動」は動物でなくても作ることが出来る。自己駆動し、相互作用する個体が多数集まると動物の群れに似た構造が形成されることが、Vicsekモデル[1]等で示されている。対象とする個体サイズも多岐にわたり、メートルスケールのヌーから準二次元平面内で振とうする数ミリメートルの棒、さらには数マイクロメートルのバクテリアなどで集団運動が観察されている[2,3]。今回扱うのは最も小さい系のひとつであるフィラメント状タンパク質を用いたものである。
フィラメント状タンパク質が自己駆動する様子は、ガラス表面に固定した分子モーター上に置くことにより観察できる。motility
assay
と呼ばれるこの再構築系で使用できるフィラメントと分子モーターの組合せは、「アクチン・ミオシン」「微小管・ダイニン」「微小管・キネシン」の3種類あるが、先の二つの系において集団運動がすでに報告されている
[4,5]
。これらで生じたパターンは群れ運動、密度波や渦運動と様々であり、フィラメントの集団運動として一貫した見解がないのが現象である。そこで行った「微小管・キネシン」系での集団運動では、微小管の長さに応じ小さな渦や束状の群れ運動をみせることが分かった。これは、従来観察されてきたものや理論により予想されてきたものと異なる。今回は実験によりみられた集団運動や低密度での挙動を説明する。

[1]Vicsek, T., et al., Phys. Rev. Lett. 75, 6 (1995)
[2]Narayan, V., et al., JSTAT, P01005 (2006)
[3]Cisneros, L. H., et al., Exp.Fluids, 43, 5 (2007)
[4]Schaller, V., et al Nature, 467, 7311 (2010)
[5]Sumino,Y., et al Nature, 483, 7390, (2012)


(2)
細胞移動における濃度勾配検出と整流作用
澤井 哲
東京大学 大学院総合文化研究科

濃度勾配の読み取りは、細胞分裂、移動、分化の根幹をになう、細胞・生体の基本的な情報処理能力として、発生のモルフォゲン場から、原核、真核の誘引場にいたるまで、生体の機能の発現、調節、維持に不可欠な役割を果たしてます。濃度の絶対値もしくはその勾配へ応答するという静的な見方は、これの現象の一端をとらえたにすぎず、生体内の濃度勾配は、多くの場合、ダイナミックに変化しています。細胞運動のモデル生物種である、細胞性粘菌Dictyosteliumの細胞集合では、このような静的な描象では理解できないパラドクスが古くから知られています。このトピックを中心に、外場に含まれる時間と空間情報を細胞がいかに統合して利用しているかについて、私たちの研究グループの最近の結果について紹介します。特に、活性化因子と抑制因子が時間差をもって増える適応的な応答と、この二つの拮抗する反応の空間的な広がりの違いによって理解できる枠組みについて解説し、フィードフォワード型の反応機構の非線形性が大きくなると、濃度の時間的な増加と減少に対する応答をみわけるローパスフィルターとしての性質をもつこと、そのことによって、整流的方向移動が実現されることなどについて、実験を踏まえ理論的な考察を紹介します。

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第11回非線形セミナ@お茶大


日時:2015年4月14日(火) 15:30~18:00
場所:お茶の水女子大学 お茶大アカデミック・プロダクション研究棟 201
アクセス: http://www.ocha.ac.jp/access/
(37番の建物です)

[
プログラム]
15:30 - 16:30
「恒常的な組織分化ダイナミクスの確率モデル」 山口裕樹 (東大総合文化)
16:30 - 17:45
「生態系としてのHuman microbiomeと概日リズム」 高安伶奈 (東大新領域)
(時間は目安です)

[
詳細]

「恒常的な組織分化ダイナミクスの確率モデル」
東大総合文化,ハーバード大医^A
山口裕樹,川口喬吾^A,沙川貴大

哺乳類の成体組織の恒常性は,幹細胞によって維持されている.幹細胞の分化と自己複製に関する運命決定がどのようになされ,恒常性がどのように維持されているかという問題は重要である.近年の実験技術の発展により,成体組織における幹細胞の運命決定を生体内(in
vivo)
で追跡することが可能になった[1].これらの実験結果は,古典的な非対称分裂モデルではなく,確率的な対称分裂モデルによる運命決定を支持し,幹細胞の運命決定の理解に大きなパラダイムシフトをもたらした[2].理論的には,Critical
Birth-Death Process(CBD)
またはvoter
model(VM)
といったモデルにより実験結果が説明されることが知られている[2].

ところが,CBDやVMといったモデルを用いた従来の理論では,モデルパラメータの仮定により,はじめから組織の恒常性が保障されている.この仮定は,実験的に得られた統計則[2]をモデルから説明するために重要な役割を果たしている一方で,分化・自己複製のレートが予め理想値に調整されている状況を表しており,現実的でない.すなわち,もしこれらのモデルのパラメータが少しでもずれれば,細胞数が指数的に増大または減少してしまい,組織の恒常性が保たれなくなってしまう.そこで我々は,幹細胞の確率的な分化と自己複製が局所的な細胞密度に依存すると仮定することで,安定な恒常性と生体内追跡実験[2]の結果を自然に説明できるモデルを提案する.我々のモデルでは,幹細胞間の相互作用によって組織の恒常性が導かれ,それに付随してCBDやVMによる統計則の振る舞いが極限において再現される.これにより,これまでの成体組織の幹細胞追跡実験結果の背後に,相互作用による局所細胞密度の自律的調整メカニズムが潜んでいた可能性が示唆される.

本セミナーでは,先行研究の結果を丁寧に紹介することからはじめ,我々のモデルにおける数値的結果について議論したい.

[1] E.Clayton et al. , Nature 446, 185-189, (2007).
[2] A.M. Klein and B.D. Simons, Development 138, 3103-3111, (2011).



「生態系としてのHuman microbiomeと概日リズム」
高安伶奈
東大新領域


 ヒトには数百種類、数百兆個の細菌が定着していると言われている。定着する部位によって菌叢は大きく異なり、ホストによる個体差も大きい。最近の研究により、常在細菌の影響は様々な生活習慣病や感染病、さらには、脳の働きにまで及ぶことが示唆されており、世界中でその応用に向けた研究の動きが加速している。

 我々の研究チームは、特に細菌叢の安定性に注目し、ヒトの唾液サンプルを4時間ごとに採取することで、唾液細菌叢が全体として概日リズムを持っていることを最近確認した。個人の菌叢構造の日内変動はホストの個人差を上回るほどの大きさではないものの、絶対菌数では、明け方は寝る前に比べておよそ10倍近く多いことを確認した。個々の種について詳細に調べてみると、それぞれ固有の周期でリズムを持つ菌種がいる一方、個々においては明確なリズムが観測できない種もあった。これらの個々の菌種の周期がどのような要因で作られているのか、またホストの概日リズムと菌叢の概日リズムにどのような関係があるのか、我々はメタゲノム解析で迫ろうとしている。

 今回の講演では、Human microbiomeの多様性や測定法の解説を始め、数理的な視点から、観測された菌叢の持つ統計的性質やその応用についてまでわかりやすく解説する。また、ホストの食事リズムと概日リズムとの関係や、乳幼児の概日リズムなど、現在進行中の研究の話題も含めて総説的に報告する。

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第10回非線形セミナ@お茶大


日時:2015年3月10日(火) 13:30~15:00
場所:お茶の水女子大学 お茶大アカデミック・プロダクション研究棟 201
アクセス: http://www.ocha.ac.jp/access/
(37番の建物です)

Speaker: Alexander S. Mikhailov
(Abteilung Physikalische Chemie, Fritz-Haber-Institut der
Max-Planck-Gesellschaft)

Title: Simple Elastic Models of Protein Machines and Synthetic Motors

Abstract:
Protein machines play a fundamental role in biological cells. As
enzymes, they facilitate or enable chemical reactions. As
manipulators, they perform operations with other biomolecules, such as
DNA. As pumps, they actively transport ions through membranes. As
motors, they are used to transport material through the cell.
While chemical structures of most protein machine are known, their
all-atom molecular dynamics (MD) simulations encounter profound
difficulties. The typical durations of a single operation cycle of
such a machine are of the order of tens of milliseconds, too long for
MD simulations where dynamics of a protein cannot be usually followed
for more than a few microseconds.
Surprisingly, simple coarse-grained elastic-network can however be
employed for structurally resolved dynamical simulations of protein
machines. In my talks, I will show how such models are constructed and
demonstrate how they are applied for several important proteins,
including HCV helicase, myosin and actin. Moreover, I will also
present and discuss a model synthetic motor constructed as an elastic
network and operating similar to real protein machines.


References

[1] Y. Togashi, A. S. Mikhailov “Nonlinear relaxation dynamics in
elastic networks and design principles of molecular machines”, PNAS
104, 8697 (2007)
[2] H. Flechsig, A. S. Mikhailov “Tracing entire operation cycles of
molecular motor hepatitis virus C helicase in structurally resolved
dynamical simulations”, PNAS 107, 20875 (2010)
[3] M. Düttmann, M. Mittnenzweig, Y. Togashi, T. Yanagida, A. S.
Mikhailov “Complex intramolecular mechanics of G-actin - An elastic
network study”, PLoS ONE 7, e45859 (2012)
[4] M. Düttmann, Y. Togashi, T. Yanagida, A. S. Mikhailov “Myosin-V as
a mechanical sensor: An elastic network study”, Biophysical Journal
102, 542 (2012)


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第9回非線形セミナ@お茶大


日時:2014年12月9日(火) 15:00~16:30
場所:お茶の水女子大学 理学部3号館 602号室
アクセス: http://www.ocha.ac.jp/access/

講演者:江崎貴裕(東京大学大学院工学系研究科、日本学術振興会特別研究員DC1)
タイトル:ネットワーク上における非線形輸送とその制御

概要:
近年、渋滞相転移を持つ多粒子系としての「交通流」の理解が進んできた。特に系の粒子密度とそれに対応する流量の間には自由流相と渋滞流相から成る非線形な関係が存在することがわかっている。本講演ではその知見をもとに、道路網、航空網といった交通ネットワークを考えることで、そうした特性がマクロな流れにどのような影響を及ぼすかを紹介する。その結果の一つとして、系における粒子の平均密度が増加するに従い、それまで安定であった密度一様な状態が不安定化し、密度が不均一になるという「マクロな渋滞現象」が存在することを示す。さらに、そうした不安定化が起こってしまっている相(高密度領域)において流量を高く維持するための単純な制御としてノードの一時的な閉鎖ルールを考える。この制御下では、一部のパラメータ領域では確かに流量が大きく改善される一方で、密度がある点を超えると閉塞相に陥ってしまう。以上の知見をもとにこうした系をどのように制御しうるかを議論したい。


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第8回非線形セミナ@お茶大


日時:2014年11月14日(金) 15:00~16:30
場所:お茶の水女子大学 アカデミック・プロダクション研究棟 2階セミナー室
  (以下のアクセスの37番)
アクセス: http://www.ocha.ac.jp/access/

Speaker:
下川 倫子 (福岡工業大学 工学部 知能機械工学科)
Title:
粘性流体中を沈降する滴の変形現象

グリセリン水溶液中に比重の異なるグリセリンの滴を落とすと、滴は落下しながらトーラス状に変形した後、不安定化を起こし、複数の滴に分裂する
[1,2]
。分裂の数は二流体の密度差、滴の体積、溶液の粘性、滴の拡散係数で構成される無次元量で整理されてきた[2]。我々はグリセリン水溶液と硫酸鉄(Ⅲ)n水和物水溶液の滴を用い、同様の実験を行った。本実験の密度差は従来の実験より1ケタ大きい。本実験においても滴の分裂現象が観察されたが、従来の丸い形状のままで分裂は起こらず、多角形に変形したのち、分裂が起こる。また、滴の分裂個数について2個から7個の分裂が観察されたが、4個以上の分裂については従来提案されていた無次元量で整理することができなかった。その理由として、無次元量の導出過程で滴にかかる抵抗としてストークス抵抗を仮定していることが考えられる[2]。この予想の検証のため、分裂の数
n
と分裂前後の滴落下の終端速度 v 0, v1 の関係を実験で調べた。ストークス抵抗を仮定した場合、v1/ v 0 ~n-2/3
となるが、実験が示すv1/ v 0はストークス抵抗が与える-2/3 乗ではなく、-1/6 乗とよく一致している。講演では、v1/ v
0
が-1/6 乗に従う理由について考察を行い、滴の変形機構を議論する。

[1] D’arcy Thompson, “On growth and forms”, Cambridge University Press (1961).
[2] F.T. Arecchi, et al., Europhys. Lett., 15, 429 (1991).

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第7回非線形セミナ@お茶大



日時:2014年11月6日(木) 15:00~16:30
場所:お茶の水女子大学 アカデミック・プロダクション研究棟 2階セミナー室
  (※以下のアクセスの37番。いつもと場所が異なりますのでご注意ください)
アクセス: http://www.ocha.ac.jp/access/

Speaker: Namiko Mitarai (Niels Bohr Institute)

Title:
Toxin-Antitoxin Battle in Bacteria

Abstract:
Many toxin-antitoxin operons are regulated by the toxin/antitoxin ratio
by mechanisms collectively coined ”conditional cooperativity”. Toxin and
antitoxin form heteromers with different stoichiometric ratios, and the
complex with the intermediate ratio works best as a transcription
repressor. This allows transcription at low toxin level, strong
repression at intermediate toxinlevel, and then again transcription at
high toxin level ([1] and references therein). Such regulation has two
interesting features; firstly, it provides a non-monotonous response to
the concentration of one of the proteins, and secondly, it opens for
ultra-sensitivity mediated by the sequestration of the functioning
heteromers. We explore possible functions of conditional regulation in
simple feedback motifs, and show that it can provide bistability for
wide a range of parameters [2]. We demonstrate that the conditional
cooperativity in toxin-antitoxin systems combined with the
growth-inhibition activity of free toxin can mediate bistability between
a growing state and a dormant state. Conditional cooperativity also
secures that the antitoxin dominated state has a substantial amount of
toxins present, which helps the transition to the toxin dominated state
under stress. These features may be relevant for understanding persister
formation in E. coli.

Refernces:
[1] I. Cataudella, A.Trusina, K. Sneppen, K. Gerdes, and N. Mitarai,
Nucl. Acids Res. (2012) 40, 6424-6434.
[2] I. Cataudella, K. Sneppen, K. Gerdes, and N. Mitarai, Plos. Comput.
Biol. (2013) 8, e1003174.

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第6回非線形セミナ@お茶大


日時:2014年9月3日(水) 17:00~18:30
場所:お茶の水女子大学 アカデミック・プロダクション研究棟 2階セミナー室
  (※以下のアクセスの37番。いつもと場所が異なりますのでご注意ください)
アクセス: http://www.ocha.ac.jp/access/

講演者:山田健太 (東京大学 工学系研究科)
タイトル:経済物理学入門~金融市場編
アブスト:コンピュータの発達に伴う高度情報化により
人間行動の履歴に関する様々なデータが解析できるようになった.
特に金融市場は,過去データが特に重要なため,早くから高頻度データが
解析できるようになり,経済物理の中で最も研究が進んでいる
対象の一つである.

本講演では,最初に金融市場の高頻度データから観測される
経験則をまとめる.次に,ディーラーの売買行動を簡単化した
ディーラーモデルを最小限の設定で構成し,かつデータから
観測される経験則を再現する.
そして,ディーラーの行動にどのような特性があれば,観測された
経験則を再現できるかを検証することにより,ディーラーの行動という
ミクロスコピックな素過程とデータから観測されるマクロスコピックな
経験則の関係を明らかにする[1].

また,マスロフモデル[2]を改良した,メゾスコピックのモデルも
同時に紹介することにより,金融市場の解析において,階層構造
を強く意識した横断的なアプローチを行う.

[1]K. Yamada, H. Takayasu, T. Ito, and M. Takayasu, Phys. Rev. E 79,
051120 (2009)
[2]S. Maslov, Physica A: Statistical Mechanics and Its Applications
278, 571 (2000)

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第5回非線形セミナ@お茶大


日時:2014年4月15日(火) 16:40~18:00
場所:お茶の水女子大学 理学部3号館2階会議室
アクセス: http://www.ocha.ac.jp/access/

セミナー後、会場において懇親会を開きます。
参加希望者は当日申しつけください。


講演者:島田 尚(しまだ たかし) (東京大学物理工学研究科)

タイトル:開放進化系の頑健性についての新しい転移とその機構

アブストラクト:
生態系、生体内の反応/遺伝子ネットワーク、経済系や人間社会のコミュニティ、…等々、世の中には多様な要素が複雑な構造で相互作用しつつ共存し、進化する系に溢れている。これらの系は、誰かがある日作ってバランスを取って手を離した、という来歴をもつわけではないので、その存在自体がむしろ驚異的に思える。実際、1970年代に「お互い平均一つの他要素としか関わり合わない」という厳しい条件が必須だということが系の線型安定性についての評価から示されている(1)。この指摘以降、生態系を主な対象として「このような軛を逃れる特別な相互作用の様式や構造化があるのだ」という議論がされてきた。また、いわゆる複雑ネットワークの研究においてもネットワーク構造と系全体の安定性の関係が盛んに研究されてきた。

本発表では、これら従来の線型安定性や構造化に基づく議論とは異なる新しい頑健性転移の機構について紹介する(2)。具体的には、開放進化系の非常に簡単な数理モデルを導入し、そのシミュレーションと平均場近似的解析から
A
)相互作用の数が多過ぎても少な過ぎてもだめ(有限相)で、ほどほどの数の時に多くの要素が共存できる(多様化相)
B
)この両相間の転移が「個々の要素にとっては相互作用相手が多い方が良い」⇔「全体にとっては、相互作用数は少ない方が良い」という綱引きで決まっていること
C
)なぜこのような開放系が次回の全く予期しない擾乱に対してある程度頑健でいられるのか、しかしながらなぜ際限なく頑健にはなれないのか、なぜ“勝ち続ける”要素は出現しないのか
等の一般的な理解が得られることを示す。

1) Gardner, M. R. & Ashby, W. R. “Connectance of large dynamic
(cybernetic) systems: critical values for stability.” Nature 228,
784-784 (1970) and May, R. M. “Will a large complex system be stable?”
Nature 238, 413-414 (1972).
2) TS “A universal transition in the robustness of evolving open
systems” Scientific Reports 4, 4082 (2014).
(http://www.nature.com/srep/2014/140213/srep04082/full/srep04082.html)

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第4回 非線形セミナー@お茶大


日時:2013年10月22日(火) 15:00-16:30
場所:お茶の水女子大学 理学部3号館2階会議室
講演者:亀井洋子(Dundee大学,英国)
タイトル:ネットワークにおける同期クラスタとその階層構造
概要:
相互作用している個々のシステムはネットワークとして表現することができる。個々のシステムや相互作用の詳細な記述からではなく、ネットワークの構造から導きだせるネットワークの挙動、特に同期現象について理論を構築してきたcoupled
cell network
理論の紹介をセミナーのはじめで行う。どのような条件下でシステム全体が同期をするのかという問題は広く研究されているが、このセミナーでは全体のネットワークが複数の固有の同期を示すグループ(同期クラスタ)に分かれる現象を考える。ネットワークの構造を隣接行列で表すことにより、与えられたネットワークが持ち得る全てのクラスタを列挙することができる。さらにこれらのクラスタの集合は、数学的にlattice(束)として表現することができ、似通ったクラスタリング現象を共有するネットワークの分類にも応用できる。このlattice構造は隣接行列の固有値、固有ベクトルと関係があり、それがsynchrony-breaking分岐現象の解析につながることを示したい。

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第3回非線形セミナー@お茶大


日時:2013年4月23日(火) 15:30~
場所:お茶の水女子大学 理学部3号館2階会議室
アクセス: http://www.ocha.ac.jp/access/
詳細情報: http://www.cf.ocha.ac.jp/simulation/event/non-linear_seminar3.html

プログラム:
15:30 - 16:30
岩石風食シミュレーションの試み (桑名杏奈・お茶大)
16:40 - 17:40
蝋燭の炎を模擬するための結合写像格子モデル (野澤浩・カオスおもちゃ工房)

東工大中尾裕也研・お茶大郡宏研共催
お茶大シミュレーション科学教育研究センター協賛
セミナー後、会場において懇親会を開きます。
参加希望者は当日申しつけください。


詳細:

「岩石風食シミュレーションの試み」
桑名杏奈・お茶大・シミュレーション科学教育研究センター

トルコのカッパドキア地方に林立する奇岩(いわゆるキノコ岩)の生成
過程の再現を試みています。風が岩石表面の粒子を運び去るという単純
な仮定のもとで、風食の過程を砂輸送方程式を用いてモデル化し、数値
シミュレーションを行った結果をいくつかご紹介します。


「蝋燭の炎を模擬するための結合写像格子モデル」
野澤浩・有限会社カオスおもちゃ工房

蝋燭は、ハイテク照明が溢れる現代においてさえも、世界中の人々がその価値
を認め、愛用している照明装置(灯火具)である。近年、癒しを求める消費者
ニーズの高まりから、その灯りを人工的に再現しうる照明装置を望む声がある。
そこで、我々は、時間的にも空間的にも拡がりを持って運動している蝋燭の炎
を模擬する照明装置の開発を試みることにした。この報告では、結合写像格子
CMLの枠組みの中で、蝋燭の炎を構成的にモデル化する方法について提案し、
その炎のCMLモデルのシミュレーション結果と動力学的特性について述べる。
尚、この仕事は松尾則之氏との共同研究である。

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第2回非線形セミナー@お茶大


日時:12月11日(火) 16:40~
場所:お茶の水女子大学 理学部3号館2階会議室
アクセス: http://www.ocha.ac.jp/access/

講演者:三浦 岳さん(京大医)
タイトル:いきもののかたち
アブストラクト:
生物の体は複雑な形をしている。この体の形がどのようにつくられるのかを研究するのが発生生物学という学問である。これまで、分子生物学の発展に伴って、個々の形態形成現象に関係する遺伝子のリストはできてきたが、それらの相互作用によってどのように生物の形が作られてくるのか、そのメカニズムはきちんと理解されていない。これまで、このようなパターン形成のモデルの枠組みとしては反応拡散系を主とする連続モデルが主流であったが、ごく最近になって、様々なほかの枠組みも使われるようになってきた。本セミナーでは、これらの様々な枠組みについて概観すると同時に、我々の研究室で行っているモデル化と実験的検証についても紹介する。


セミナー後、会場において懇親会を開きます。
参加希望者は当日申しつけください。

当セミナーは,お茶大の郡研究室と東工大情報理工の中尾研究室が
合同で開催する公開セミナーです.

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第1回非線形セミナー@お茶大


日時:7月23日(月)15:00 ~
場所:お茶の水女子大学 理学部3号館2階会議室
アクセス: http://www.ocha.ac.jp/access/

プログラム:

15:00 - 16:00
小林徹也(東京大学生産研)
「生体内確率現象と情報処理:情報理論の観点から」

16:00 - 16:30
休憩

16:30 - 17:30
畠山哲央(東京大学総合文化研究科)
「酵素競合律速による概日時計の周期温度補償性」

18:00 -
懇親会
(参加を希望される方は当日お申しつけください)


アブストラクト:
小林徹也(東京大学生産研)
「生体内確率現象と情報処理:情報理論の観点から」
ミクロな生体システムは確率的に振る舞う構成要素を組み合わせ非常に安定な振る舞いや情報処理を実現している。
その設計原理は未解明であり、システム生物学における最重要問題の一つと捉えられる。
確率性を持つ中で効果的な情報処理が実現される可能性として、
生体システムに情報論および統計的な意味で最適に情報処理をする力学系が埋め込まれているという可能性がある。
本研究では、実際に様々な細胞内反応システムがベイズ推定と等価な力学系を実装することが可能であり、
その結果としてノイズの中から効率的に情報を取り出してこれることを示す。
また、その基本的な構造を情報理論の言葉を用いて解析すると共に、確率的情報処理の可能性についても言及する。


畠山哲央(東京大学総合文化研究科)
「酵素競合律速による概日時計の周期温度補償性」
概日リズムとはバクテリアから脊椎動物まで生物種を問わず遍在する生理現象であり、1)恒常的な環境化でも約24時間周期で振動する、2)明暗変化や温度変化により位相がリセットされる、3)温度変化に対して周期が頑健である(温度補償性)、という3つの特徴を持つ。概日時計の中心となる物質は生物種によって様々である。例えば、シアノバクテリア概日時計の中心を担うのはKaiA、KaiB、KaiCという3つの蛋白質であり、KaiCが約24時間周期でリン酸化・脱リン酸化を繰り返す事により時を刻む。2005年に名古屋大学の近藤孝男博士らは、3種のKai蛋白質とエネルギー源であるATPを試験管内で混和する事により、概日時計を試験管内で再構成することに世界で初めて成功した。驚くべき事に、この試験管内KaiCリン酸化振動においても、温度を変えても周期は殆ど変化しなかった。
 一般に(生)化学反応速度は温度に強く依存するため、温度の上昇に伴い振動周期は短くなる。最も有名な化学振動子であるBelousov-Zhabotinsky反応では、10℃の温度上昇でその周期は約2分の1となる。一方で、概日時計の周期はその分子的基盤の違いに依らず温度変化に対して頑健である、つまり温度補償性を示す。そのメカニズムを知る事は概日時計研究においてだけでなく、生物学全体にとって重要な課題である。
 近年の生化学的な研究により、概日周期の温度補償性には酵素一つ一つの回転数の温度非依存性が重要である事が示唆されている。だが、このような"element-level"の温度補償性と、概日周期の温度補償性という"system-level"の温度補償性の間のギャップが完全に埋められているとは言いがたい。
 そこで、本研究ではsystem-levelの温度補償性メカニズムの理論的解明を主眼とし、まずKaiCリン酸化振動の数理モデルを構築した。その結果、KaiCのリン酸化を促進する蛋白質であるKaiAの「取り合い」を介して、KaiCリン酸化周期の温度補償性が生じうることを見出した。また、共通の酵素によって触媒される多段階の反応さえ存在すれば、より単純なネットワークを持つ化学反応系でも同一のメカニズムにより温度補償性が実現される事を見出した。これは、分子的基盤の違いに依らず温度補償性メカニズムを統一的に理解できる可能性を示唆する結果である。

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